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はじめに
日本政府は令和7年2月18日、「健康・医療戦略」を閣議決定しました。これは、「国民が健康で長生きできる社会を実現しつつ、日本が誇る医療の研究開発力をさらに高め、新たな産業創出を通じて経済成長へつなげていく」 という大きな目標を掲げる国家戦略です。本記事では、その概要や背景、具体策をわかりやすく整理し、今後の展望を探ります。kantei.go.jp/jp/103/actions/202502/18kenkouiry…
なぜ「健康・医療戦略」が重要なのか?
1 現在の日本が直面する課題
- 超高齢化社会日本の平均寿命は世界最高水準ですが、認知症をはじめとする高齢者特有の疾患や介護需要、さらにはがん・生活習慣病などの慢性疾患が増加しています。
- 感染症リスクとワクチン開発の遅れコロナ禍で痛感したように、国内でワクチンや治療薬が速やかに生み出される体制は十分とは言えませんでした。
- ドラッグ・ラグ/ドラッグ・ロス問題欧米で既に承認されている医薬品が日本では未承認または開発されない例が多く、治療機会の損失につながっています。
- 国際競争力の低下mRNAワクチンなど新規モダリティを軸に世界の医薬品市場はダイナミックに変化していますが、日本の存在感は相対的に縮小気味と指摘されています。
2 目指す姿:健康長寿社会と経済成長の両立
- 法的根拠健康・医療戦略推進法(平成26年法律第48号)この法律に基づき政府が進めてきた戦略は今回が第3期にあたります。
- 研究開発の成果を早期に社会へ還元国民の「治療機会や予防策の拡大」「QOL(生活の質)向上」に直結させる一方、ヘルスケア領域全体を成長産業化する狙いがあります。
第3期「健康・医療戦略」のポイント
1 統合プロジェクトの強化
今期では大きく8つのプロジェクトに整理し、AMED(日本医療研究開発機構)の支援を核として研究開発を推進します。
- 医薬品プロジェクト低分子医薬品だけでなく、抗体医薬、核酸医薬、mRNA医薬など新規モダリティの開発強化。
- ドラッグ・ラグ/ロスの解消へ向け、国内外の治験体制を整備。
- 医療機器・ヘルスケアプロジェクトAI・IoT技術やロボティクスを活用した革新的医療機器・システムの開発。
- 高齢者支援デバイス、SaMD(Software as a Medical Device)など治療現場のDX推進にも対応。
- 再生・細胞医療・遺伝子治療プロジェクトiPS細胞やウイルスベクターを用いた再生医療技術を推進。
- CDMO(医薬品開発製造受託機関)やベクター生産設備の整備・人材育成。
- 感染症プロジェクト新興・再興感染症に対応するワクチン・治療薬・診断薬の迅速開発体制を確立。
- SCARDA(先進的研究開発戦略センター)を中心に、平時から研究を進め、有事には即応。
- データ利活用・ライフコースプロジェクト次世代医療基盤法を活かし、全国レセプト・検診データ、ゲノム情報など多様なビッグデータを統合。
- がんや認知症などのレジストリとの連携を強化し、個別化医療・精密医療を加速。
- シーズ開発・基礎研究プロジェクト多様な学問分野や若手研究者を巻き込み、分野横断的な基礎研究を継続支援。
- 研究成果を橋渡し研究や臨床研究へとつなぐ環境を整備。
- 橋渡し・臨床加速化プロジェクト臨床研究中核病院を中心に、国際共同治験への対応力を強化(FIH試験・シングルIRBの導入など)。
- 治験コーディネーターやモニター等の専門人材育成も含め、臨床開発のスピードアップを目指す。
- イノベーション・エコシステムプロジェクトスタートアップの加速支援、VCとの連携による資金循環を強化し、新薬や医療機器を社会実装まで結びつける。
- 大企業・大学・研究機関など幅広い主体の連携プラットフォームづくり。
2 感染症有事に備えた対応
- コロナ禍を教訓に、国内ワクチンや治療薬を「海外頼み」にしないための研究体制・生産インフラを整備。
- 「ワクチン戦略」「新型インフルエンザ等対策政府行動計画」など政府全体の施策とも連携し、感染症危機が起きた際の社会経済損失を最小化。
3 データ利活用・DXの加速
- RWD(リアルワールドデータ)のさらなる活用に向け、匿名加工医療情報・仮名加工医療情報の扱いを明確化。
- 医療ビッグデータを研究・事業化につなげるためのプラットフォーム・ガイドラインを拡充。
- ゲノム医療の実現に向けたバイオバンク活用や、全国医療情報プラットフォームとの連携。
4 国際展開(アジア・アフリカ健康構想、グローバルヘルス戦略)
- 高齢化の進むアジアや、将来の成長が期待されるアフリカ諸国との連携を強化。
- 規制調和や官民連携を通じて、日本の医薬品・医療機器企業の海外進出を後押しし、インド太平洋地域の医療エコシステム構築に貢献。
- UHC(ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ)実現のための国際協力や資金動員策にも積極参加。
施策の具体的な柱
- 官民連携で開発確保:事業者の予見性を高める10年超かかる医薬品開発を見据え、政策や薬事承認の方向性をあらかじめ示し、企業が投資しやすい環境を作る。
- AMEDが中心となり、研究成果を切れ目なく産業化へつなげる仕組みを整備。
- 臨床試験支援プラットフォームの充実革新的なモダリティへの対応ができるGMP(Good Manufacturing Practice)対応施設を用意。
- 国内外のスタートアップや製薬企業が日本で治験を実施しやすいようワンストップ窓口を設置。
- 国際共同治験を呼び込み、日本発グローバル創薬を増やす。
- エビデンス創出と社会実装を一体化ヘルスケア産業においても、予防・健康づくりの効果を科学的に検証し、指針を策定。
- 企業の健康経営(健康投資)や職域介護支援などを通じ、生産性向上&生活者支援を実現。
- 産学官医の総力結集:イノベーション・エコシステムスタートアップやVCが入りやすいオープンイノベーション環境づくり。
- 大学病院・医学部の研究時間確保、人材確保策などアカデミア発の画期的シーズ創出を促す。
- 異分野(AI・量子技術など)との融合研究を積極支援。
- データヘルス改革:DXで医療が変わる医療ビッグデータをAI解析し、新薬標的の発見や遠隔診療にもつなげる。
- PHR(Personal Health Record)の仕組みを活用し、個人の健康データを予防・受診行動に活かす。
期待される効果と今後の見通し
- 医療の高度化と患者負担軽減研究開発の成果が早く実用化されることで、希少疾病・難病・がんの患者さんに対する新たな治療法や診断技術が迅速に届けられる。
- 経済波及効果医薬品・医療機器産業やヘルスケアサービス産業における国内市場拡大と同時に、海外展開による国際競争力向上も期待。
- 感染症リスクの低減国産ワクチンや治療薬が速やかに実用化されれば、有事における社会経済への打撃を最小化できる。
- グローバルヘルス貢献アジア・アフリカでの保健医療水準向上とあわせ、日本が培ったノウハウを輸出する形でWin-Winを図る。
今後に向けて:私たちにできること
- 新たなヘルスケアサービスや研究に挑戦テクノロジー分野など異業種からの参入が増えることで、医療・健康分野の課題を解決する新ビジネスが誕生しやすくなる。
- 個人の健康管理意識向上PHRの普及や健康経営の波及などを活かし、一人ひとりが自分の健康を能動的にマネジメントする流れを後押し。
- グローバル視点でのキャリア形成国際共同治験・国際展開が広がるなか、語学力や海外規制の知見を持つ人材はさらに活躍の場が拡大。
まとめ
令和7年2月18日に閣議決定された「健康・医療戦略」は、感染症への備えや新薬開発体制の強化など、コロナ禍を経て必然性を増した政策を網羅的に提示しています。同時に、ビッグデータやデジタル技術を最大限活用して、国民一人ひとりがより健康に暮らせるだけでなく、日本発のイノベーションを世界に向けて発信していく基盤を築く壮大なビジョンでもあります。今後の動向を注視しながら、ぜひ皆さんもこの領域の変化を捉え、新たな可能性を探ってみてください。まさに医療と健康が「国の未来」を左右すると言っても過言ではない時代。国民全体で協力し合い、「健康長寿」と「経済成長」を同時に叶える社会を目指していきましょう。
参考リンク・文書
- 健康・医療戦略推進法(平成26年法律第48号)
- 新型インフルエンザ等対策政府行動計画
- 第4期がん対策推進基本計画/認知症施策推進基本計画
- ワクチン戦略









