メンタル論文紹介5分で読めます

認知スキルは年齢とともに衰えるのか?「使うか、失うか」の真実

導入:仕事のパフォーマンス、年齢で落ちる?

佐藤さん(45歳)は、最近仕事で数字を扱う機会が増えた。しかし、若い頃よりも計算ミスが増え、思考のスピードも鈍った気がする。「年齢のせいなのか、それとも単に使っていないからなのか?」と疑問に思い、ネットで調べてみたところ、ある研究を発見した。それが、「Age and Cognitive Skills: Use It or Lose It」という論文だ。

研究の紹介

論文情報

  • タイトル(英語): Age and Cognitive Skills: Use It or Lose It
  • ジャーナル名・出版年: Science Advances, 2025年3月
  • 著者: Eric A. Hanushek, Lavinia Kinne, Frauke Witthöft, Ludger Woessmann
  • 所属機関: Stanford University, CESifo, IZA, University of Munich, DIW Berlin, Berlin School of Economics, University of Potsdam, ifo Institute

研究の目的

これまでの研究では、認知能力(リテラシーや数的能力)は30歳頃から低下し始めると言われてきた。しかし、それらの研究の多くは断面データ(cross-sectional data)に基づいており、加齢による変化なのか、それとも世代間のスキルの違いなのかが区別できないという問題があった。本研究では、ドイツの成人を対象とした縦断データ(longitudinal data)を用い、実際に個人のスキルが年齢とともにどう変化するのかを調査した。

研究方法

  • ドイツのPIAAC-Lデータ(OECDが実施する成人能力測定調査のドイツ版)を使用
  • 約3.5年の間隔をあけて、同じ個人のリテラシーと数的能力を測定
  • 年齢によるスキル変化を統計的に補正し、純粋な加齢の影響を分析

研究の要旨(Abstract)

研究の重要性

  • 認知能力は経済的な成功と密接に関連しており、スキルの低下は労働市場や国全体の成長に影響を及ぼす。

研究の目的

  • 年齢と認知スキルの関係を縦断データで分析し、本当にスキルが加齢によって低下するのかを検証する。

研究方法

  • PIAAC-Lデータを用い、年齢ごとのスキル変化を測定
  • 「加齢の影響」と「世代間のスキル差」を分離するための統計的手法を導入
  • スキル使用頻度(仕事・日常生活)との関係を分析

結果

1. 40代まではスキルはむしろ向上する(リテラシーは46歳、数的能力は41歳でピーク)2. スキルの低下は、スキルをあまり使わない人にのみ発生する3. ホワイトカラーや高学歴者は、スキルを頻繁に使う限り加齢による低下がほぼ見られない4. 女性は特に数的能力の低下が大きい

結論

  • スキルは使わなければ衰えるが、使い続ければ保持・向上できる
  • ホワイトカラー職や高学歴者はスキル低下を防ぎやすい
  • 女性の数的能力は年齢とともに低下しやすいため、意識的なトレーニングが必要

研究結果

佐藤さん「やっぱり年齢でスキルは落ちるのか…」

専門家「実は、必ずしもそうではありません。この研究では、40代まではリテラシーも数的能力も向上することが示されています。」

佐藤さん「でも、50代になるとやっぱり下がるんですね?」

専門家「確かに、50代以降の数的能力は低下傾向にあります。しかし、仕事や日常で頻繁にスキルを使っている人は、ほとんど低下しないんです。」

  • 佐藤さん「どうすればスキルを維持できますか?」

専門家「仕事でのスキル使用を増やすことが重要です。特に、数字を扱う業務や読解が必要な業務に積極的に取り組むと、スキルの低下を防げます。」

忙しいビジネスマンのための実践ガイド

  • スキルを維持・向上させるための方法

1. 日常的にリーディングと計算を行う

  • 書籍やニュース記事を読む習慣をつける
  • 家計簿をつける、予算管理をする2. 仕事で積極的にスキルを活用
  • 仕事でデータ分析やプレゼン資料の作成を行う
  • 会議の議事録をまとめる3. 新しいことに挑戦
  • 語学学習やプログラミングを学ぶ
  • ボードゲームやパズルで脳を鍛える4. 定期的なトレーニング
  • 計算問題を解く
  • 文章の要約を作る練習をする

まとめ

佐藤さんはこの研究を読んで、「年齢が原因ではなく、使わないからスキルが落ちるのか!」と気づいた。そこで、毎朝新聞を読む習慣をつけ、仕事でも積極的に数字を扱うようにした。数ヶ月後、以前よりもミスが減り、思考もスムーズになったことを実感した。

  • 年齢はただの数字。スキルは「使うか、失うか」だ。あなたは今日、どのスキルを使いますか?

結論

「年を取ると頭が鈍る」のは迷信だった!スキルは使い続ければ衰えない。今日から、新しいことに挑戦してみよう!

参考文献

  1. 1Hanushek et al., Sci. Adv. 11, eads1560 (2025)
  2. 2OECD, Programme for the International Assessment of Adult Competencies (PIAAC)
  3. 3その他、認知能力と経済成長に関する関連研究

この記事を書いた人

岡本 賢

医師。愛育病院で小児科の臨床に立つかたわら、日経メディカルで連載。CrossFit Level 1 Trainer の資格を持ち、HYROX にも出場する。Business Athlete Club では、運動・睡眠・栄養の研究を、働く人の毎日の選択に訳して届けている。

Business Athlete Club について