「1セットの短時間トレーニングでも成果は出る?」「いや、複数セットの方がいいのでは?」:忙しいビジネスパーソンにとって、トレーニング時間と効果の最適バランスは常に気になるテーマです。今回は、レジスタンス運動での「単一セット vs 複数セット」論争を扱ったメタ分析を取り上げ、筋肥大を目的にする場合の有効なセット数について掘り下げていきます。
はじめに
医療従事者として臨床に携わり、同時にトレーニング分野でも経験を積んできました。仕事と運動を両立する“ビジネスアスリート”の視点から、効率的かつ効果的な筋肥大メソッドを追求するのが私のライフワークです。今回ご紹介するのは、レジスタンス運動におけるセット数の違いによる筋肥大効果を比較したメタ分析です。論文の内容とあわせて、忙しいビジネスパーソンがどのように応用しやすいか、具体的なアドバイスをまとめました。
論文の基本情報
この研究では、単一セットと複数セットが筋肥大に与える影響をメタ分析によって評価しました。
研究の目的・方法
背景
- レジスタンス運動(いわゆる筋トレ)は筋肥大を促進する有効な方法ですが、最適なセット数については議論がありました。
- 時間の限られた人にとっては「最小の時間投資で最大の効果を得るには?」という視点が重要になります。
- 本研究は、筋肥大に着目したうえで、単一セットと複数セットの違いを統合的に解析した初期の大規模メタ分析として知られています。
方法
- データ収集: 1960年から2009年までの英語文献をPubMedなどのデータベースから検索。
- 対象研究: 最終的に8件の研究(19の治療群)から、合計55の効果量(ES; Effect Size)が抽出された。
- 分析手法: 多層線形混合モデルを用い、研究間・治療群間・治療群内の分散を考慮。
- 評価指標: 主に筋断面積(CSA)や筋厚などを「筋肥大の客観指標」とし、各セット数における効果量を比較。
研究結果
- 複数セットは単一セットよりも筋肥大効果が高い平均効果量: 単一セットで約0.25、複数セットで約0.35と算出。
- 統計的にも有意な差が認められ、複数セットのほうがより大きな筋肥大を誘発するという結果になった。
- 2〜3セットと4〜6セットの差2〜3セット、4〜6セットともに1セットと比較して優位な結果。
- ただし4〜6セット以上になると、効果が飽和する可能性が示唆された(追加のセット数増加が、比例して筋肥大を増やすとは限らない)。
- トレーニング経験の有無初心者・中級者・上級者問わず、複数セットの方が優位という傾向は一貫していた。
ここで示された効果量の数値を具体的に見ると、複数セットは単一セットと比べておよそ40〜45%ほど筋肥大が大きいと推定されます(信頼区間を考慮しながら見ると、40%前後の増加が望めるという解釈が多い)。
周辺情報・他研究との比較
- 単一セットでも一定の効果があるCarpinelliとOttoの研究(1998)などでは、1セットでも初期段階においては筋力・筋肥大効果が得られると報告されている。
- 複数セットを支持する研究が増加Schoenfeldらのメタ分析(2016, 2017)でも、やはり複数セット群の方が筋肥大に優位という結果を示している。
- セット数以外の要素セット数だけでなく、「漸進的オーバーロード(負荷を段階的に上げる)」「適切な休養(超回復)」「十分な栄養(特にタンパク質摂取量)」などの要因も重要。
- 研究デザインや被験者層の違いなどにより、結果のばらつきはあるものの、総じて複数セットが優れているという結論が主流。
ビジネスパーソンが実践しやすいトレーニング方法
- 週2〜3回、各部位2〜3セットを目安に
- 多関節エクササイズ(スクワット、ベンチプレス、デッドリフトなど)を中心に組み合わせ、時間効率を高める。
- 1種目につき2〜3セットを行うだけでも、単一セット以上の筋肥大効果を期待できる。
- トレーニングの強度とレップ数
- 筋肥大の観点では、概ね1RM(最大挙上重量)の60〜80%程度の負荷で8〜12レップ前後を行うのが一般的。
- ただしビジネスパーソンで時間が限られる場合は、1セット目を少し高めの負荷で、2セット目以降にやや軽めの負荷にする方法も効率的。
- セット間の休憩時間
- セット間休憩は1〜2分を目安にしながら、心拍や呼吸がある程度落ち着くのを待つ。
- 短めの休憩(30秒〜1分)でもある程度筋肥大は狙えるが、総ボリュームをこなすにはやや物足りない可能性あり。
- 継続が最優先
- 忙しくてどうしても時間がない日は1セットでも良いので続けることが大切。
- 継続のハードルを下げつつ、「時間がある日は2〜3セット」という柔軟な切り替えがポイント。
オリジナル考察・“ビジネスアスリート”視点
- モチベーションと時間管理2〜3セットのトレーニングは、1セットよりは時間が増えるとはいえ、エクササイズ種目を絞れば20〜30分程度で終えることも十分可能。
- スキマ時間を活用しやすいアプリやジムの活用、在宅勤務中の休憩時間に取り入れるなど、柔軟な工夫で続けやすくなる。
- 負荷の定期的な見直しセット数に加え、週単位・月単位で負荷を見直し、少しずつ重りやレップ数を増やしていくことでさらなる筋肥大を狙う。
- 停滞期に入りやすい中級者以上は特に、漸進的オーバーロードの概念を意識することが重要。
- リカバリー(休養・睡眠)の重要性複数セットで高い負荷をかけるほど、しっかりとした睡眠や栄養補給が欠かせない。
- 仕事の忙しさが増した時期には、トレーニング量を調整し、オーバートレーニングを防ぐことも賢明な戦略。
リミテーション(研究の限界)
- 対象研究数の少なさ8件と比較的少数の研究に基づくため、結果を一般化する際は注意が必要。
- 被験者の多様性年齢や性別、トレーニング経験年数などが異なる被験者が混在しているが、詳細に区分けしたデータが不十分。
- 4〜6セット以上の効果4〜6セット以上を実施した場合の筋肥大効果を正確に評価できるほどのデータは不足。飽和点の詳しい分析はさらなる研究が必要。
まとめ
- 複数セットは単一セットに比べて筋肥大効果が明確に優位という結論が得られた。
- 特に2〜3セットは時間と効果のバランスに優れ、1セットを上回る筋肥大を狙える。
- 4〜6セット以上に挑戦する場合は追加の効果が得られる可能性もあるが、メリハリのある休養とリカバリーがより重要となる。
- 忙しいビジネスパーソンにとっては、続けやすい範囲で複数セットを取り入れることが筋肥大の最大化につながるだろう。
読者へのメッセージ
筋トレは続ければ必ず効果が出る一方、過度なトレーニングやオーバーワークは逆に結果を遠ざけることもあります。ぜひご自身の生活スタイルや体調を最優先しながら、長期的な視点でトレーニングを計画してみてください。あなたの経験や工夫が、同じように忙しいビジネスパーソンの大きなヒントになるはずです。
参考文献・引用
- Krieger JW. SINGLE VS. MULTIPLE SETS OF RESISTANCE EXERCISE FOR MUSCLE HYPERTROPHY: A META-ANALYSIS. Journal of Strength and Conditioning Research. 2010.
- Carpinelli RN, Otto RM. Strength training: single versus multiple sets. Sports Med. 1998.
- Schoenfeld BJ. The mechanisms of muscle hypertrophy and their application to resistance training. J Strength Cond Res. 2010.
- Schoenfeld BJ et al. Strength and hypertrophy adaptations between low
- vs. high-load resistance training. J Strength Cond Res. 2016.
注意書き(免責事項)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、医療行為や個別の指導に代わるものではありません。トレーニングやサプリメントに関しては、必ず専門家や医師にご相談のうえ実践してください。以上が、レジスタンス運動におけるセット数と筋肥大についてのより深い解説と実践的なアドバイスです。複数セットが有効とはいえ、まずは「継続」を念頭に置き、無理のない範囲で少しずつステップアップしていきましょう。ぜひ参考にしてみてください。









