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第2回:肩こり・腰痛の原因とメカニズム

■ 肩こり(頸肩部痛)とは

肩こりの定義と特徴

  • 定義肩こりは頸部から肩甲骨付近にかけての「こわばり感」「だるさ」「重苦しさ」などを総称する症状。正式な医学用語では「頸肩腕症候群」「肩周囲の筋・筋膜性疼痛」などと分類される場合があります。
  • 特徴「こり」を自覚しながらも、器質的損傷(骨折や腫瘍など)が見当たらないケースが多く、慢性化しやすい。
  • 痛みやこわばりにとどまらず、頭痛や吐き気、めまい、集中力低下などを伴う場合もある。

筋肉の緊張と血行不良

  • 主な筋肉僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋・脊柱起立筋群などが過度に緊張し、硬結(筋肉の凝り固まり)が起こる。
  • 血行障害による慢性化筋肉が緊張すると血管が圧迫され、酸素や栄養素の供給が悪くなり、疲労物質が蓄積しやすい。これが痛みやだるさを持続させ、中枢感作を助長する引き金となる。

姿勢不良(巻き肩・ストレートネック)の影響

  • 巻き肩肩が前方に巻き込まれ、僧帽筋上部・肩甲挙筋などが常時引っ張られる姿勢。デスクワーク・スマートフォンの長時間使用で生じやすい。
  • ストレートネック頸椎(首の骨)の生理的前弯が失われ、まっすぐになった状態。頭部が前に突き出すため、首〜肩への負担が増し、慢性的な筋緊張を招きやすい。

ストレスや噛みしめ癖との関連

  • ストレスホルモンによる筋緊張交感神経優位状態が続くと、肩や首の筋肉が弛緩しにくくなる。結果、痛みの感受性が上昇。
  • 噛みしめ癖(歯ぎしり)顎関節から側頭筋・僧帽筋へと緊張が波及し、頸肩部痛を引き起こす場合がある。就寝時のマウスピース装着で症状改善が見られる例も。

■ 腰痛の原因と主な分類

腰痛の定義と種類

  • 定義腰椎から骨盤周辺にかけての痛みや不快感。慢性腰痛は、3か月以上痛みが継続する状態を指す。
  • 代表的分類非特異的腰痛レントゲンやMRIで明確な器質的異常を示さない腰痛。約85%がこれに該当すると言われる。
  • 神経根性(坐骨神経痛など)椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症により神経が圧迫され、下肢痛やしびれを伴う。
  • 特異的腰痛がん転移、感染症(脊椎カリエスなど)、圧迫骨折(骨粗鬆症や外傷)など、明確な病変が存在する。

姿勢・骨格・筋力低下の影響

  • 骨盤の傾き猫背や反り腰の姿勢では、腰椎への局所負荷が大きくなり、椎間板や椎間関節にストレスが集中。
  • インナーマッスルの弱化腹横筋や多裂筋など、体幹深部の筋力が低下すると腰椎の安定性が低下し、日常動作で過度に負荷がかかりやすい。
  • 運動不足筋力低下と体重増加が進み、腰への負荷が増大。血行不良による老廃物蓄積も助長。

中枢感作を通じた慢性化

  • 長期間の痛み信号急性腰痛(ぎっくり腰など)が適切に治療・リハビリされないまま慢性化すると、脊髄〜脳内の痛み伝達経路が過敏化(中枢感作)する。
  • 心理社会的要因ストレス、不安、仕事への不満などが痛みの長期化に寄与する“イエローフラッグ”として知られる。結果として痛み回避行動が固定化し、活動量が下がってさらなる筋力低下・血行不良を招く。

内臓疾患由来の要注意サイン

  • 腎臓・泌尿器系疾患腎盂腎炎や尿管結石などが腰部痛を呈する場合がある。
  • 婦人科系疾患子宮内膜症や骨盤内感染なども腰痛を引き起こす。月経異常や骨盤痛を伴う時は精査が必要。
  • がんの骨転移長引く腰痛のなかにはがん転移が隠れている可能性がある。体重減少・発熱・全身倦怠感など他の症状を伴う場合は要注意。

■ 共通する慢性化のメカニズム:中枢感作と生活習慣

中枢感作による痛み増幅

前回お伝えしたように、肩こりや腰痛いずれの場合も、中枢感作という神経系の過敏化が慢性痛において重要なキーワードです。痛み刺激が長期にわたり繰り返されることで、脊髄後角の神経細胞や脳の感受性が亢進し、軽微な刺激でも強い痛みを感じるようになります。

姿勢不良・運動不足・ストレスの三重苦

  • 姿勢不良デスクワークやスマホ利用で同じ姿勢が長く続くと、筋肉や椎間板に偏った負担がかかる。
  • 運動不足体幹筋力が不足すると、身体の“動的な安定性”が失われ、ちょっとした動作でも筋肉や関節に無理が生じる。
  • ストレス交感神経の持続的興奮が筋緊張と血行障害を招き、痛みが慢性化・増幅する。さらにメンタル面が萎縮し、活動量が減ることで痛み改善のチャンスが失われがち。

■ 病院での検査・診断の流れ

  • 問診と身体所見痛みの起始、増悪・軽快因子、痺れや脱力感などを詳細に聴取。
  • 姿勢評価、可動域テスト、神経学的テスト(Lasègueテスト、徒手筋力テストなど)。
  • 画像診断レントゲンやMRI、CTスキャンでの確認。非特異的腰痛の場合は保存療法中心。
  • 血液検査感染症やリウマチ、がんなどを疑う場合、炎症マーカーや腫瘍マーカーを測定。
  • 他科との連携婦人科、泌尿器科、消化器科などの専門科を紹介する場合も。

■ まとめ

  • 肩こりの主なメカニズム筋肉の緊張、姿勢不良、心理的要因が関与。
  • 腰痛の主なメカニズム非特異的腰痛、中枢感作、心理社会的要因が関与。
  • 共通する慢性化の背景中枢感作、姿勢不良、運動不足、ストレスが影響。

肩こりや腰痛は一般的な症状ですが、その陰には複雑なプロセスがあります。正しい知識を持ち、適切な治療・予防を行いましょう。次回は「第3回:頭痛の種類――緊張型・片頭痛・群発頭痛を徹底解説」です!

この記事を書いた人

岡本 賢

医師。愛育病院で小児科の臨床に立つかたわら、日経メディカルで連載。CrossFit Level 1 Trainer の資格を持ち、HYROX にも出場する。Business Athlete Club では、運動・睡眠・栄養の研究を、働く人の毎日の選択に訳して届けている。

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