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疲労の犯人は乳酸ではなかった!?運動パフォーマンスの新常識とは

研究を読むきっかけ

⏰午後6時、広告代理店で働く田中さん(35)は、来月のフルマラソン挑戦に向けてランニングクラブの仲間と練習に励んでいた。「30分を超えると脚が重くなってくる。乳酸が溜まってるからだよね…」そうつぶやく田中さんに、隣の研究好きなエンジニア佐藤さん(38)がスマホを見せた。「実はね、最近の研究では“乳酸=疲労物質”は間違いって言われてるんだよ」田中さんは驚いた。あの乳酸が、疲労の原因じゃない!?その真相を探るべく、佐藤さんが紹介してくれたのが今回の論文だった。

研究の紹介(論文情報)

  • 原題:Lactic acidosis: implications for human exercise performance
  • 邦題:乳酸アシドーシスは本当に疲労の原因か?ヒトの運動パフォーマンスへの影響
  • ジャーナル名・
  • 出版年:European Journal of Applied Physiology(2025年)
  • 第一著者:Simeon P. Cairns
  • 最終
  • 著者:Michael I. Lindinger
  • 第一所属機関:Auckland University of Technology(ニュージーランド)
  • この論文は「乳酸が疲労の原因である」という従来の考えに再検証を加え、筋肉内の酸性化(アシドーシス)と運動パフォーマンスの関係を多角的に分析しています。

研究の要旨(Abstract 全文)

重要性

高強度運動時、筋肉内や血中の乳酸と水素イオン(H⁺)濃度が上昇する「乳酸アシドーシス」が発生しますが、その影響は誤解されてきました。

目的

乳酸やアシドーシスが疲労にどのように関与するのか、筋力・パワーとの関係を整理し再評価すること。

方法

文献レビューによる徹底的な分析。人間の運動中・後の筋肉や血液中のpHや乳酸濃度を、様々な実験モデルとともに評価。

結果

  • 血漿の乳酸濃度が25mM、筋内で50mMに達しても筋出力への直接的影響は小さい。
  • 酸性度がpH6.5〜6.2にまで下がると、最大筋力が12%、短縮速度が5%、ピークパワーが22%低下。
  • ただし、乳酸はカリウムバランスの乱れを防ぐ保護効果もあり、一概に「悪」ではない。

結論

激しい運動での疲労には、速筋線維の重度なアシドーシスが寄与する可能性があるが、それだけが原因ではなく、リン酸やカリウム、酸化ストレスなど多因子が関与する複雑な現象である。

研究内容を対話で読む

登場人物田中さん(広告マン・ランナー)× 佐藤さん(理系エンジニア)田中「でも走ってるとき、乳酸が溜まる感じはするよね」佐藤「実際は乳酸自体が筋肉を傷めてるわけじゃなくて、筋内が酸性になることが問題なんだって」田中「でもその酸性化で力が出なくなるんでしょ?」佐藤「そう。pHが6.5以下になると、最大筋力が1割以上下がるのは確か。ただ、それが起こるのは主に速筋。しかも、それ以外にもリン酸やカリウム、疲労感を伝える神経の影響も大きいみたい」田中「じゃあ、“乳酸=悪者”は間違いか」佐藤「むしろ乳酸には保護効果もあるって言ってるよ。体の中でバランスをとってるんだね」

忙しいビジネスパーソンのための実践ガイド

  • 疲労の仕組みを知ることで、トレーニング効率もアップ!
  • 乳酸は疲労の犯人ではない。むしろエネルギー源にもなる
  • pH(筋肉の酸性度)を意識したリカバリーが重要
  • 速筋中心の運動では酸性化が進みやすいので、インターバルやクールダウンが効果的
  • 重曹(NaHCO₃)などのアルカリ補給が運動パフォーマンスを改善する場合も
  • 長時間の疲労は複合要因(リン酸・カリウム・ROS)なので多角的対策を!

まとめ

田中さんは練習後、プロテインに重曹をひとつまみ加えてみた。翌朝、驚いたことに筋肉の張りがいつもより軽い。「体のメカニズムを知るって、やっぱ大事だなぁ」読み手のあなたは、まだ“乳酸=疲労物質”を信じていますか?

関連論文ピックアップ

  • Lactate metabolism: a new paradigm for the third millenniumJournal of Physiology, 2018
  • 乳酸は単なる老廃物ではなく、代謝とシグナリングに関わる重要物質
  • Intracellular acidosis and fatigue: insights from muscle fiber studiesMedicine & Science in Sports & Exercise, 2016
  • 酸性度が筋肉機能に及ぼす直接的影響を明らかに
  • Buffering strategies and performance: a review of bicarbonate supplementationSports Medicine, 2020
  • 重曹などの補助食品がどのようにパフォーマンスを高めるか

参考文献

  1. 1Cairns SP, Lindinger MI. Lactic acidosis: implications for human exercise performance. Eur J Appl Physiol. 2025. doi.org/10.1007/s00421-025-05750-0

この記事を書いた人

岡本 賢

医師。愛育病院で小児科の臨床に立つかたわら、日経メディカルで連載。CrossFit Level 1 Trainer の資格を持ち、HYROX にも出場する。Business Athlete Club では、運動・睡眠・栄養の研究を、働く人の毎日の選択に訳して届けている。

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