睡眠論文紹介9分で読めます

エナジードリンク、結局どうなの?科学が教える本当の話

スナップサマリー

  • エナジードリンクの効果は「カフェイン」次第
  • 運動能力・集中力・代謝アップに一部有効な可能性
  • 子ども・妊婦・心疾患持ちにはリスクあり

研究を読むきっかけ

金曜の夕方、営業部の佐藤さん(35歳)はコンビニのレジ前で手を止めた。目の前に並ぶカラフルなエナジードリンク。「最近疲れが取れないし、これ飲んだら会議も集中できるかな?」一方、ジムで筋トレに励む大学院生のアキラ(24歳)も、ワークアウト前にレッドブルを手に取る。「筋力アップにも効くって聞いたし、気合い入れるか」でもふと疑問が浮かぶ:「本当に効くの?」「カラダに悪くない?」そんな疑問に、科学がどう答えているのか。今回は、数々の研究者が集まって書かれた最新レビュー論文をもとに、エナジードリンクの真実を紐解いていきます

研究の紹介(論文情報)

この論文は、2025年にジャーナル『Nutrients』に掲載された最新のレビュー論文です。

  • 英語
  • 原題:Common Questions and Misconceptions About Energy Drinks: What Does the Scientific Evidence Really Show?
  • 日本語訳
  • タイトル:エナジードリンクに関するよくある疑問と誤解:科学的根拠は何を示しているのか?
  • ジャーナル名:Nutrients
  • 出版年:2025年
  • 第一著者:Jose Antonio
  • 最終
  • 著者:Adam Wells
  • 第一所属機関:Nova Southeastern University(米・フロリダ州)この論文は、エナジードリンクに関する17の「よくある疑問」に対し、科学的根拠をもとに明快に回答する構成で、成分、安全性、運動効果、脳機能、代謝など幅広い観点から分析しています。

研究の要旨(Abstract 全文)

重要性

エナジードリンクは人気飲料だが、安全性や効果に疑問がある。

目的

主成分・運動や認知機能への効果・健康リスクなど17の疑問を科学的に検証。

方法

既存研究をもとにレビュー形式で構成。

結果(詳細)

  • 主成分はカフェイン:市販されているエナジードリンクのほぼすべてに含まれており、その平均含有量は約174mg。FDAが推奨する上限(1日400mg)を基にすれば、1〜2本までは通常問題ない範囲。
  • 運動パフォーマンスへの影響:特に持久系運動(サイクリング、ランニング)において、3〜5%のパフォーマンス向上が確認された研究が複数存在。例えば、サッカー選手がより長い距離を高速度で走行できたという報告も。
  • 筋力・パワー系の効果ベンチプレス、スクワットなどで瞬発的な出力が向上したという研究もあり、1〜3mg/kgのカフェイン量での有効性が示されている。ただし、筋肥大(筋肉量の増加)までは確認されていない。
  • 認知機能・反応速度:エナジードリンク摂取後、視覚・聴覚反応時間が短縮されるケースがあり、集中力や即時記憶の向上も報告されている。一部の研究では、グルコースとの相乗効果も示唆。
  • 代謝と脂肪燃焼:摂取後に安静時エネルギー消費(REE)が5〜15%上昇したとの報告。短期的には脂肪酸の動員やリポリシスの促進が見られたが、長期的な体脂肪減少には決定的なエビデンスは乏しい。
  • 性差と遺伝的要因:CYP1A2という遺伝子型により、同じ量のカフェインでも効果が異なる可能性あり。また、男性の方が体脂肪減少に効果が見られやすいという報告も。
  • 安全性と副作用:心拍数や血圧の上昇、不眠、焦燥感といった一過性の副作用が報告されており、特に若年者・高齢者・妊婦には注意が必要。QT間隔の延長や動悸など、心電図に影響を及ぼすケースも。
  • 睡眠への影響:睡眠の質の低下、入眠遅延、深い睡眠時間の減少が報告されている。カフェインはアデノシン受容体をブロックし、覚醒状態を促進するが、それが睡眠には逆効果。
  • 妊娠中の摂取リスク:胎児の心拍上昇、低出生体重、流産リスク増加の可能性があるとして、200mg/日未満が推奨されている。
  • 10代への影響:心拍上昇、不整脈、不眠、依存傾向、集中力の低下などが報告されており、明確な健康リスクがあるとして消費を控えるべき。

このように、カフェインは一定のパフォーマンス向上効果をもたらす一方で、摂取量や個人の状況によりリスクも存在する“諸刃の剣”です。

研究内容を対話で読む

佐藤(営業部/35歳):この前の会議前にエナジードリンク飲んでみたんですよ。確かに頭はスッキリした気がします。田中先生(運動生理学者):カフェインの作用ですね。150〜300mgの摂取で注意力や反応速度が向上すると報告されています。ただ、体重やカフェイン耐性にもよるので、効果は個人差がありますよ。アキラ(大学院生/24歳):筋トレ前に飲むと力が出る気がします。あれって筋力アップにも効果あるんですか?田中先生:実際、スクワットやベンチプレスの出力が増えたというデータもあります。ただし、筋肉量が増えるかというと、それは別の話です。

佐藤夜も仕事がある時、もう1本飲もうか迷うんですよね…田中先生:夜の摂取は避けた方が良いですね。睡眠の質を下げ、翌日のパフォーマンスを逆に落とします。ちなみにカフェインは「アデノシン受容体」をブロックすることで脳を覚醒状態にし、筋肉内のカルシウム循環を高めることで筋力やパワーにも影響を及ぼします。エナジードリンク1本に含まれるカフェインは平均174mgで、FDAが定める1日の上限(400mg)を大きく下回りますが、複数本の摂取やコーヒーとの併用には注意が必要です。さらに、カフェインの代謝速度は遺伝的な要因や性別でも異なります。特定のCYP1A2遺伝子型を持つ人は効果が出やすいという報告もあります。

忙しいビジネスパーソンのための実践ガイド

  • 飲むタイミングは午前〜夕方までに(就寝6時間前以降は避ける)
  • 運動前30分に150〜200mgのカフェインで集中力・筋力が向上する可能性あり
  • 1日のカフェイン摂取量は400mg未満に抑える(妊婦は200mg以下)
  • 糖分の摂りすぎに注意(無糖タイプの選択肢も検討)
  • 子ども・心疾患がある人・妊婦は基本的に避ける

まとめ

佐藤さんはその日、午後の会議に備えて無糖タイプのエナジードリンクを1本飲んだ。頭は冴えたが、その夜は飲まずに済ませた。「なんでも“飲み方”が大事なんですね」アキラも筋トレ前に1本。数値にはっきり出るほどではなかったが、気分が上がって集中できた。エナジードリンク、飲むか飲まないかはあなた次第。ただし、科学的根拠を知って“使いどころ”を見極めることが、賢い選択につながります。

関連論文ピックアップ

  • "Energy drink consumption and its association with health and behavioral risks in young adults"(Nutrition Journal, 2023)若年層におけるエナジードリンクの健康リスクとの関連を調査。
  • "Caffeine and exercise performance: a meta-analysis"(Journal of Sports Sciences, 2022)カフェインの運動能力への影響を体系的に検証。
  • "The effect of energy drinks on cognitive performance"(Frontiers in Psychology, 2021)認知機能におけるエナジードリンクの有効性と限界を分析。

参考文献

  1. 1Antonio, J. et al. Common Questions and Misconceptions About Energy Drinks: What Does the Scientific Evidence Really Show? Nutrients 2025, 17, 67. doi.org/10.3390/nu17010067※ 本記事は医学的アドバイスではありません。健康に不安がある方は医師・専門家にご相談ください。

この記事を書いた人

岡本 賢

医師。愛育病院で小児科の臨床に立つかたわら、日経メディカルで連載。CrossFit Level 1 Trainer の資格を持ち、HYROX にも出場する。Business Athlete Club では、運動・睡眠・栄養の研究を、働く人の毎日の選択に訳して届けている。

Business Athlete Club について