睡眠Vol. 027分で読む

睡眠は、時間とリズムから。

規則性と死亡リスクの関連を見た観察研究。必要な睡眠時間も確保する。

Rhythm, before duration.
SLEEP — RHYTHM, BEFORE DURATION

時間より、
リズム。それが先にある。

7時間眠れているか、と人はよく聞く。けれど身体が問うているのは、たぶん別のことだ。昨日と同じ時間に眠り、同じ時間に目を覚ましたか。長さよりも先に、揃えること。睡眠の輪郭は、そこから立ち上がる。

窓辺の時計と、伏せた手帳。同じ時刻が、毎晩そこで待っている。Plate II

揺るがない時刻

揺らがない時刻が、身体の地図になる。

Windredらの解析(2024, Sleep, n=60,977)では、睡眠規則性が高い群で全死亡リスクが低い関連がみられた。睡眠時間も考慮した観察研究であり、規則性を整えるだけで寿命が延びるとは証明していない。

睡眠時間と規則性はどちらも確かめたい要素だ。平日と休日の時刻が大きく違うなら、無理のない範囲で予定を整える。時刻を揃えるために必要な睡眠を削る根拠にはならない。

体内の時計

光と食事と就床、3つで時計は合う。

視交叉上核の概日リズムは、約24時間より少しだけ長い。だから毎日、外からの手がかりで合わせ直される。朝の光、最初の食事、そして就床の時刻。Walker(2017, Why We Sleep)が繰り返し書いたのは、この同調装置が思いのほか繊細だ、ということだった。

National Sleep Foundationの推奨(Hirshkowitz 2015, Sleep Health)は成人で7〜9時間とされる。けれど推奨時間に届いていても、就床時刻が日々ずれていれば、ホルモンの分泌も体温の谷も、同じ位置には戻らない。必要な睡眠時間と時刻の規則性は、両方を確かめたい。

MUSIC — Bach, Brandenburg1721
J.S.バッハ『ブランデンブルク協奏曲』 · Brandenburg Concertos, BWV 1046–1051

バッハの拍は、揺るがないことで美しい。テンポが一定だからこそ、装飾は自由に跳ねる。睡眠の規則性も似ている。同じ時刻に眠るという退屈な約束のうえで、はじめて昼の即興が成り立つ。

脱いだ靴と、点けたままのスタンド。同じ手順が、夜を整えていく。Plates VI–VII

最初の1歩

まず起床時刻を固定する。

規則性を取り戻すとき、最初に動かすべきは就床ではなく起床のほうだ。眠れなかった翌朝にこそ、いつもの時刻に起きる。光を浴び、朝の食事を取る。眠気は夜に戻ってくる。これは臨床でも、繰り返し確かめられてきた手順である。

休日の起床も、平日との差を1時間以内に収めたい。社会的時差ぼけ(social jet lag)と呼ばれるこの揺らぎは、代謝指標とも結びつくと報告されている。長く眠るために起きる時間を遅らせることは、しばしば、翌週の自分から時間を借りることに近い。

HISTORY — The Bimodal Night2005
ロジャー・イーカーチ『失われた夜の歴史』 · A. Roger Ekirch, At Day's Close — Night in Times Past
産業革命以前、人々は夜を二つに分けて眠っていた。第一の眠りと、第二の眠りのあいだに、静かな時間があった。
Editorial paraphrase / 編集部による要約

イーカーチは中世以降の日記・裁判記録・医学書500点を横断し、人類が長くfirst sleep / second sleepの二相睡眠で生きていたことを復元する。いまの一相睡眠も、歴史のなかでは1つの様式に過ぎない。様式が変わっても、規則的に繰り返すという性格だけは、ずっと変わらなかった。

深夜の窓と、消えかけた灯り。同じ時刻が、また明日も来る。Plate VIII
CODA:編集後記

長く眠ろうとして、起きる時刻を遅らせていたのは、私たち自身だった。バッハの拍が揺るがないのは、装飾を自由にするためだった。今夜から動かすのは、就床ではなく、起床のほう。たった1時間の固定が、来週の自分への手紙になる。

編集部

WordsAMPL Editorial

EditorKen Okamoto, MD

Footnotes & References
脚注・文献
  1. 01Windred DP et al. 2024, Sleep · SRIと全死亡 n=60,977↗
  2. 02Hirshkowitz M et al. 2015, Sleep Health · NSF推奨睡眠時間↗
  3. 03Walker MP. 2017, Why We Sleep(書籍)
  4. 04Wittmann M et al. 2006, Chronobiol Int · social jet lag↗
  5. 05Ekirch AR. 2005, At Day's Close — Night in Times Past(書籍)