Vol. X. The Protein Question
UpdatedApril 2026
Themes07
Citations14 papers
Era2018—2025
Vol. X · Special Issue
The Protein Question
The Protein Question — quantity, source, timing, age, kidney.
Vol. X · Plate I
医師 岡本 賢PubMed 検証済み物を売らない最終レビュー 2026.05
Vol. X. — Special Issue

タンパク質の、
全部の問いに答える。

量・種類・タイミング・年代別・腎臓・サルコペニア・サプリの位置づけ。タンパク質まわりの俗説は多いが、過去5年でメタ解析が屋台骨を据え直した。

Vol. VIII で「1.6g/kg/日でプラトー」を入口にしたが、本号はそこから腎臓・年齢別・植物vs動物まで深掘る。読むと、夕食の選択が変わる。

01
1.62 g/kg/日 で、筋合成は折れる
Morton 2017, BJSM
0.00
g/kg/日 — 筋合成プラトー(Morton 2017)
「タンパク質は多いほど筋肉になる」は線形ではない。49試験のメタ解析でプラトーが定量化された。これがいま運動栄養のリファレンス。

Morton 2017 BJSM(49 RCT、n=1,863):レジスタンス運動 + 蛋白補給で除脂肪量・筋力が増えるが、1.62 g/kg/日でプラトー、それ以上は追加効果がない。 Kirwan 2022 AJCN メタアナでも同方向で、サプリ vs 食事に有意差なし。

03 g/kg筋合成が伸びる帯 → 1.62 でプラトー
Morton 2017 · BJSM · 49 RCT n=1,863 · 1.62 g/kg/日 を超えると除脂肪量の追加増加なし
Practical / 実践への落とし
目標は 体重kg × 1.4-1.6 g/日、3-4食に分散。 70kgなら100-110g、内訳は朝30g、昼30g、夕40g、補食10g程度。 サプリでも食事でも、合計が同じなら結果は同じ。
Unsettled / 未確定の余白
高齢者・サルコペニア患者ではプラトー位置がやや高い可能性(§05)。 競技アスリートのbulk期は2.0g/kg/日まで上げる主張があるが、長期エビデンスは弱い。
1.62 g/kg/日 を超えると、
タンパク質は、ただの
カロリーになる。
Vol. X / 01
02
種類
ホエイ・カゼイン・ソイ・ピー、どれを選ぶか
Liao 2024, Nutrients
ほぼ等価
総用量を揃えれば筋合成効果は同等
プロテイン界の「ホエイ最強」言説は、最新のネットワーク・メタアナで再評価された。差は思ったより小さく、用量で吸収されている。

Liao 2024 ネットワークメタ:ホエイ、カゼイン、ソイ、ピー(豆)の筋肥大効果は、総用量とロイシン量を揃えれば有意差なし。 ホエイは「速い」という機能的差異はあるが、筋合成最終量で勝負がつくほどではない。 Cuyul-Vásquez 2023 の系統レビューも同方向。

Practical / 実践への落とし
ホエイで継続的に摂取できる人はホエイで、植物性が好きな人は ソイ or ピーで。 コスト・味・乳糖耐性で選んで構わない。重要なのは1日の合計。
Unsettled / 未確定の余白
高齢者では植物性プロテインのロイシン不足が筋合成に響く可能性(要追加摂取)。 コラーゲンプロテインは筋肥大には弱い、結合組織には別の意味あり。
03
タイミング
アナボリック・ウィンドウ45分、は更新された
Trommelen 2023, Cell Rep Med
>0 時間
100g単回でも筋合成上昇が持続
「運動後30分以内にプロテイン」は2010年代の通説。2023年のRCTで、100g単回投与でも12時間以上の筋合成が観察され、窓は閉じない、と書き換わった。

Trommelen 2023(RCT n=36):レジスタンス運動後に 100g 単回ホエイを投与し、安定同位体追跡。 筋合成は 12時間以上上昇を維持、25g 群と比べて有意に大きい同化反応。 「45分以内に20g」は単純化しすぎで、合計と分散が本質。

Practical / 実践への落とし
「運動後30分」を死守する必要はない。1日の合計を3-4食に分散することが優先。 深夜に運動した日でも、翌朝の朝食でプロテイン30gを摂れば回復は確保できる。
Unsettled / 未確定の余白
高齢者のanabolic resistance がある集団では、タイミング感度がやや高い可能性。 運動と食事の時間を完全に切り離していい用量は未標準化。
アナボリック・ウィンドウは、
実は閉まらない。
Vol. X / 03
04
植物 vs 動物
植物性タンパクは、動物性に「ほぼ」追いついた
Reid-McCann 2025, Nutr Rev
ほぼ同等
用量×ロイシン補正で筋合成効果が一致
植物性プロテインの吸収率・必須アミノ酸プロファイルは過去5年で再評価された。動物性に劣るのは事実だが、量とロイシン補正で実質的に追いつける。

Reid-McCann 2025 系統レビュー:植物性タンパクの DIAAS(必須アミノ酸スコア)は動物性より低いが、1日量を1.4倍に増やすか、ロイシン3g追加で動物性と等価。 Monteyne 2023 RCT は実食材ベースで「ビーガン高蛋白食でも筋合成は同程度」を示した。

Practical / 実践への落とし
植物中心の食事を選ぶ場合、量を1.5倍程度に増やすか、ロイシン強化食材(豆腐+大豆ミート+ピー)を組み合わせる。 完全に動物性をゼロにする必要はない。週3回の魚+植物中心が現実解。
Unsettled / 未確定の余白
高齢者でビーガンの長期サルコペニア予防エビデンスはまだ弱い。 ビタミンB12・鉄・亜鉛など微量栄養素のチェックは別途必要。
Vol. X · Halftime
植物性は、
動物性に追いついた。
— With dose adjustment.
05
年代別
60代以降は、もっと食べないと萎む
Benz 2024, JAMA Netw Open
HR 0.00
60+で確定サルコペニアの全死亡リスク(Rotterdam Study)
若年と同じ1.0g/kg/日では、高齢者は筋肉を維持できない。サルコペニアは死亡リスクと直結することが大規模コホートで示された。

Benz 2024 JAMA Netw Open(Rotterdam Study、n=5,888、平均69.5歳、追跡中央値約9年):確定サルコペニア(低握力+低筋量)で全死亡 HR 1.93(95%CI 1.53-2.43)。 サルコペニア肥満(SO)ではさらにリスクが高まる(HR 1.94-2.84)。 PROT-AGE 2013 GL は60+で 1.0-1.2 g/kg/日(運動者は1.2-1.5)を推奨。 日本のNHNS(Ishikawa-Takata 2024)でも、男性70+の26%が0.8未満で「危険群」。

1確定サルコペニア1.93
Benz 2024 · Rotterdam Study · n=5,888 · 60+ 確定サルコペニアの全死亡ハザード比(基準 HR=1)
Practical / 実践への落とし
60歳を超えたら目標を 体重kg × 1.2-1.5 g/日に上げる。 特に朝食でタンパク質30g(卵2個+ヨーグルト+納豆 or プロテイン20g)を確保する。 親世代の食事も同じ視点でチェック。
Unsettled / 未確定の余白
80歳超の極高齢者で、上限が下がる(食欲・吸収低下)可能性。 腎機能低下例では §06 とのトレードオフ判断が必要。
06
腎臓
健康な腎臓は、高蛋白に耐える
Devries 2018, J Nutr
差なし
健康成人の高蛋白食でGFR変化なし
「タンパク質を多く摂ると腎臓を壊す」は俗説。過去5年で再評価された結論:健康な腎臓では問題なし。CKD既往例は別。

Devries 2018 J Nutr メタ解析(28試験、n=1,358):高蛋白食(≥1.5g/kg/日)で 健康成人のGFR変化なし。 Cochrane 2023(DKD)は糖尿病性腎症患者では蛋白制限が腎機能保護に有効、と異なる結論。 つまり「健康な腎」と「既に弱った腎」では別ルール。

Practical / 実践への落とし
健康診断でクレアチニン・eGFR が正常なら、高蛋白食を恐れる必要はない。 eGFR <60、糖尿病既往、CKDあれば、主治医と蛋白量を相談。 年1回 eGFR チェックを習慣化する。
Unsettled / 未確定の余白
境界域(eGFR 60-75、若年)の最適蛋白量は標準化されていない。 多発性嚢胞腎・IgA腎症など特殊病態では別議論。
健康な腎臓は、
高蛋白食に耐える。
壊れた腎臓には別のルール。
Vol. X / 06
07
サプリ
BCAA・HMB・コラーゲン、本当に効くのは
Plotkin 2021, Nutrients
選別必須
BCAAは弱い、HMBは限定、クレアチンは別格
プロテイン以外のサプリ群は、どれが効いてどれが過大広告か。過去5年のメタが整理した。

Plotkin 2021 系統レビュー:BCAA単独では筋合成効果は限定的(プロテイン全体が摂れていれば不要)。 HMB は高齢者・サルコペニア集団でわずかな効果(Rathmacher 2024 ISSN)。 クレアチン(Vol.VII §05 で扱った)は別格で、認知・筋ともに効く。

Practical / 実践への落とし
優先順位:①プロテイン総量(食事+サプリ)→ ②クレアチン3-5g/日 → ③HMB(高齢者のみ)→ ④BCAAは不要。 「最先端サプリ」を追う前に、合計タンパク質量とトレーニング刺激を見直す。
Unsettled / 未確定の余白
コラーゲンペプチドは結合組織への効果が示唆されているが、用量・継続期間は未標準化。 グルタミン・アルギニンなどの単独効果は弱い。
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タンパク質は、
足し算ではなく、設計だ。

Vol. X で扱った14本の論文は、すべて PubMed API で実在検証済み。

運動の最低ラインは Vol. VIII、論文の読み方は /paperへ。

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