量より、
EPA/DHAの比。そこに答えがある。
オメガ3の話は、長らく雑に扱われすぎた。種類と比率と量を分けて見ると、絵がはっきりする。「魚油サプリ全般」では、ぼやけた答えしか出てこない。
Bhatt 2019 NEJM の REDUCE-IT 試験は、スタチン治療下で高TG血症(135〜499 mg/dL)の患者 8,179 人を対象に、純EPA(イコサペント酸エチル)4g/日 vs プラセボを比較した。主要心血管イベントは HR 0.75(25%減、p<0.001)。「EPA単体・高用量」が明らかに有効。
対照的に Aung 2018 JAMA Cardiology のメタ解析(10試験、77,917人)は、通常用量(おおむね 1g/日前後の EPA/DHA 混合)のサプリでは、心血管イベントの有意な減少を示さなかった(HR 0.96)。「魚油はとっておけば安心」という過去の常識は、薄まっていく。
老人サンティアゴは、85日目にようやく巨大なカジキを掛ける。海から獲る魚は、雑にひとくくりにはできない。どの魚を、どれだけ、どう獲るか。ヘミングウェイの簡潔な散文が描いたのは、漁という営みの規律だった。オメガ3もまた、「魚油全般」ではなく、種類と比率と量で語られるべきものだ。
Mozaffarian & Wu 2011 JACC の包括レビューは、EPA/DHA の生理作用を抗炎症・中性脂肪低下・抗不整脈・血圧低下で整理した。一般人口での「予防的サプリ」と、特定の高リスク集団での「治療」は別の問題。前者は食事から、後者は処方として、として分けるのが現代的な読み方。
健常者の予防はまず青魚を週2〜3回。心血管高リスク・高TG血症の患者は処方薬としての高用量EPAが選択肢。「魚油サプリでとりあえず」という時代は、緩やかに終わりつつある。
魚油をひとくくりにしていたあいだ、答えはずっとぼやけていた。種類と比率と量を分けると、絵がはっきりする。純EPA・高用量は治療として、青魚は食事として。「とりあえず魚油サプリ」の時代は、静かに終わっていく。