食物繊維、
25gという曲がり角。
栄養の議論で、いま最もコスパがいいのは食物繊維。ただし、量を見ないと話にならない。25gという数字には、メタ解析で描かれたはっきりした曲がり角がある。
Reynolds 2019 Lancet は、185の前向きコホート研究と58のRCTを統合した大規模メタ解析。食物繊維摂取量と全死亡率の用量反応曲線で、25〜29g/日のあたりではっきりと曲がる。8g/日増えるごとに死亡率が5〜27%、冠動脈疾患・2型糖尿病・大腸癌のリスクが軒並み低下。
Threapleton 2013 BMJ の22コホート・約100万人のメタ解析は、食物繊維7g/日増加ごとに心血管疾患リスクが9%下がる(RR 0.91)と示した。Reynolds 2019 と独立に、別の角度から同じ結論。食物繊維のエビデンスは、少なくとも循環器領域では揺るぎがない。
日本人の食物繊維平均摂取量は約14g/日。目標の25gまで上げるには、主食の半分を全粒・豆・野菜に置き換える現実的な切り替えが要る。玄米・全粒パスタ・オートミール・豆類・きのこ・葉物。サプリ(イヌリン、サイリウム)は補助的だが、食品から取る方が短鎖脂肪酸の質と発酵パターンが豊か。
西洋型の食事に欠けているもの、それが食物繊維だった。アフリカで外科医として働いた経験が、その一点を彼に教えた。— Editorial paraphrase / 編集部による要約
外科医・疫学者バーキットは、アフリカと西洋の食物繊維摂取量の差から、現代の慢性疾患を食事の欠落として捉え直した。彼が広めた食物繊維仮説が、いまReynoldsやThreapletonのメタ解析として数字で裏づけられている。1日の繊維量を問う発想そのものが、この本から始まった。
食物繊維は、腸内細菌が短鎖脂肪酸(酪酸・酢酸・プロピオン酸)に発酵することで、免疫・代謝・腸管バリアに広く効く。「単に便通の話」では足りない。1日の食物繊維量は、体内の小さな経済を回す通貨。
栄養の議論はいつも複雑になりがちだが、食物繊維だけは数字がはっきりしている。25という曲がり角を越えるために動かすのは、主食の半分。一日のお椀の数を、体内の小さな経済を回す通貨として数え直す。それだけのことが、曲線を下に向ける。