ビタミンD、
サプリは効かないという結論。
ビタミンDの物語は、2010年代の熱狂から大きく後退した。健常者にとって、サプリは魔法ではない。最大規模のメガRCTが揃って、null(効果なし)の結論を返した。
Manson 2019 NEJM の VITAL 試験は、健康な米国人 25,871 人を 2,000 IU/日 のビタミンD₃ vs プラセボに振り分け、5.3年追跡した。一次アウトカム(侵襲性がん・主要心血管イベント)はいずれも有意差なし(HR 0.96 と 0.97)。「がんと心臓を予防する魔法のビタミン」というイメージは、ここで畳まれた。
「ビタミンDといえば骨」という常識も、LeBoff 2022 NEJM(VITAL骨折サブスタディ)が同じデザインで覆した。総骨折・非脊椎骨折・股関節骨折いずれも HR 0.98、有意差なし。Bolland 2018 Lancet Diabetes Endocrinol の 81 RCT メタ解析も、骨密度・転倒・骨折のいずれにも効果がないと示していた。
VITAL とは独立に、Neale 2022 Lancet Diabetes Endocrinol の D-Health 試験(豪州、60歳以上、ビタミンD₃ 60,000 IU/月を5年)も、全死亡率(HR 0.99)・癌死亡率(HR 1.15)に有意差なしと結論づけた。「VITAL は特殊な集団だった」という反論を封じる、独立した null。エビデンスは揃った。
明らかな欠乏(25(OH)D <20 ng/mL)の補正は、依然として臨床上の意義がある。問題は「健常者の予防的サプリ」。日光(屋外15分/日)と魚(鮭・サバ)から取る方が、本来の経路。サプリは欠乏が確認されたときの選択肢。
魔法のビタミンという物語は、VITAL で畳まれ、D-Health で繰り返し確かめられた。健常者にとってのサプリは、null のまま。本来の経路は、午後の光と、皿の上の魚にある。サプリは、欠乏が確認されたときの選択肢として、静かに残る。