睡眠Vol. 085分で読む

コーヒー、量と時刻を考える。

カフェインの半減期は約5時間。眠りへの影響は、量と飲む時刻、個人差で変わる。

Coffee, and the 2 p.m. line.
SLEEP — COFFEE, AND THE 2 P.M. LINE

コーヒー、
午後2時という境。

コーヒーが眠りに効くか効かないか、というより、効く時間を読み違えている。半減期は個人差が大きい。午後2時は予定を考える例であり、全員の影響が切れる境界ではない。

壁の時計が2時を指す。Plate II

6時間前でも、削れる

この試験の400mgでは、6時間前でも睡眠への影響がみられた。

Drake 2013 J Clin Sleep Med の RCT は、就寝0/3/6時間前にカフェイン400mgを投与し、客観的に睡眠時間を計測した。6時間前でも総睡眠時間が約1時間以上減少。被験者本人はそれをほとんど自覚していない。「夜は普通に眠れている」と感じても、実際には削られている。

注がれていく黒い液体。Plate III

半減期と、午後2時という境

半減期5時間が、午後2時に一本の線を引く。

カフェインの半減期は健康成人で約5時間。午後2時の一杯(100mg)は、午後7時に50mg、深夜0時にもまだ25mg残る。Clark & Landolt 2017 のSRが整理した通り、入眠潜時の延長・徐波睡眠の減少が、自覚されないまま積み上がる。

5時間
カフェイン半減期:Clark & Landolt 2017 個人差で2–10時間
誰もいないカフェ、最後のカップ。Plate IV
ESSAY — Balzac on Coffee1839
オノレ・ド・バルザック『現代の興奮剤論』 · Honoré de Balzac, Traité des excitants modernes
コーヒーは知性を駆け立てる。だがその代償として、人は自らの生命の蓄えを少しずつ前借りしている。
Editorial paraphrase / 編集部による要約

バルザックは20年近く、節制なくコーヒーを飲み続けた人だった。彼の『現代の興奮剤論』は、コーヒー・茶・砂糖・酒・煙草の五つを論じ、これらが知や創作を確かに後押しする一方で、生命の活力を削っていくと結ぶ。半減期5時間という現代の数字は、彼が直感していたこの取引を、ただ時計の文字盤の上で読み直しているにすぎない。

CYP1A2 という、個人差の遺伝子

同じ一杯でも、遺伝子が効き方を分ける。

同じコーヒーで影響が出る人と出ない人がいるのは、CYP1A2 遺伝子の多型による。Cornelis 2006 JAMA は、CYP1A2 遅代謝型でコーヒー摂取量と心筋梗塞リスクの関連を示した(睡眠への直接データではないが、体内残留時間が長い遺伝背景の存在を実証)。「私はコーヒー何杯飲んでも眠れる」という申告は、半分は本当で、半分は気づいていない。

焙煎の豆と、銅のポット。Plates VI–VII
緑茶・チョコ・OTC鎮痛剤

コーヒー以外にもカフェインは隠れている。緑茶(30〜50mg/杯)、ダークチョコ(25mg/100g)、エクセドリンなど一部のOTC鎮痛剤(65mg/錠)。「夜に控える」は、コーヒーだけの話ではない。

底に残った輪、夕暮れの終わり。Plate VIII
CODA:編集後記

効くか効かないかではなく、いつ効くか。半減期5時間は、午後2時という静かな境を引く。夜は普通に眠れていると感じても、6時間前の一杯はもう、眠りを少し削っている。今日の最後の一杯を、その線の手前に置くこと。

編集部

WordsAMPL Editorial

EditorKen Okamoto, MD