Vol. XIII. The Cardio Frontier
UpdatedApril 2026
Themes07
Citations17 papers
Era2018—2025
Vol. XIII · Special Issue
The Cardio Frontier
The Cardio Frontier — genetics, imaging, siRNA, AI.
Vol. XIII · Plate I
医師 岡本 賢PubMed 検証済み物を売らない最終レビュー 2026.05
Vol. XIII. — Special Issue

心血管リスク評価の、
新しい地図。

Lp(a)・PCSK9・AI ECG・冠動脈CT・FH・SGLT2・inclisiran。「LDL を下げて脂を落とす」だけだった時代から、心血管医療は遺伝・画像・siRNAの世代に書き換わっている。

GBD 2023 も認める:心血管疾患は世界一の死因。Vol. XIII は、その最前線を17論文で読む。

01
Lp(a)
Lp(a) — 遺伝で決まる、隠れたリスク
Tsimikas 2022, J Am Coll Cardiol
0%
成人の Lp(a) 高値(>50 mg/dL or >125 nmol/L)
LDL コレステロールが正常でも、Lp(a) が高い人は心血管イベントを起こす。生涯一度測れば終わる、遺伝的リスクファクター。

Tsimikas 2022 J Am Coll Cardiol レビューと Bhatia 2024 Circulation の最新データ:世界人口の20%が Lp(a) 高値(>50 mg/dL)、心血管イベントを 1.5-2倍上げる独立因子。 olpasiran(O'Donoghue 2022 NEJM)と muvalaplin(Nicholls 2025 JAMA)が Lp(a) を80-95%下げる薬として開発中。

Tsimikas 2022 · J Am Coll Cardiol · 成人の約 20%(10 人に 2 人)が Lp(a) 高値(>50 mg/dL)
Practical / 実践への落とし
一生に一度、Lp(a) を測定する(保険外でも数千円)。 高値(>50 mg/dL)なら、循環器内科で家族歴・FH スクリーニング・他リスク評価を一緒に。 現時点で Lp(a) を直接下げる承認薬はないが、LDL を強くコントロールすることで全体リスクは下げられる。
Unsettled / 未確定の余白
Lp(a) を直接下げて心血管予後が改善するかの最終 RCT は2026-2027年に出る予定。 現状は「リスクを知る、他の介入を強化する」段階。
Lp(a) は、生涯に一度測れば、
一生分のリスクが見える。
Vol. XIII / 01
02
PCSK9
PCSK9阻害は、LDL治療の天井を上げた
FOURIER-OLE 2022, Circulation
0%
PCSK9阻害でLDL低下(プラセボ比)
スタチンで届かない LDL コレステロール 70 未満の世界に、PCSK9 阻害薬が連れて行く。FOURIER-OLE がその長期持続性を証明した。

PCSK9 阻害薬(evolocumab, alirocumab)の長期追跡:LDL を 30 mg/dL 未満まで下げることが安全に可能。 FOURIER-OLE(5年継続)で MACE 低下が持続、認知機能影響なし。 inclisiran(siRNA、半年に1回投与)が次世代として実用化(ORION-3, ORION-8)。

Practical / 実践への落とし
スタチン最大用量で LDL ≥70 mg/dL かつ既往CVD・FH があれば、PCSK9 阻害薬を主治医と議論。 inclisiran(年2回注射)はアドヒアランス上の利点が大きい。
Unsettled / 未確定の余白
長期(10年以上)の安全性データはまだない。 コスト負担と医療システムへの影響が日本で議論中。
03
AI ECG
AI ECG が、隠れた心不全を見つける
Attia 2019, Nat Med
AUC 0.00
AI ECGによる無症候性LVD検出
標準的な12誘導心電図から、AIが「現時点では症状なくても、将来心不全になる可能性が高い」を見つけ出す時代。

Attia 2019 Nat Med:12誘導 ECG だけで 無症候性LV機能低下を AUC 0.93で検出。 後続の Yao 2021 で実臨床導入、Galloway 2024 で心房細動の早期検出が拡張。 1年以内の心不全発症リスクを予測する AI ECG モデルも複数報告。

Practical / 実践への落とし
年1回の健診心電図を「正常」と捨てず、可能ならAI判読も併用するクリニックを選ぶ。 家族性突然死・心筋症家族歴がある人は早期から AI ECG ベースの評価が望ましい。
Unsettled / 未確定の余白
AI ECGの保険適用は限定的(日本ではまだ)。 偽陽性で過剰検査・不安惹起のリスク。
AI が、12誘導 ECG から、
未来の心不全を見つける。
Vol. XIII / 03
04
冠動脈CT
冠動脈CT が、非侵襲で全部見せる
SCOT-HEART 2018
HR 0.00
CCTAでMACE低下(5年)
心臓カテーテルが必要だった冠動脈評価が、CT で非侵襲・低被曝で可能になった。SCOT-HEART がアウトカム改善を示した。

SCOT-HEART 5年(n=4,146):症状ある患者で CCTAを早期実施で MACE HR 0.59。 Bianchini 2025 メタアナで日本含めた多国データでも再現。 CT-FFR(CTから機能評価まで)が標準化され、カテーテル検査の必要性を半減。

Practical / 実践への落とし
胸痛・労作時息切れがあり、年齢40代以上なら、CCTAを「最初の検査」候補として循環器内科に相談。 CACスコア(冠動脈石灰化)も健診メニューに入れる価値あり。
Unsettled / 未確定の余白
無症候・低リスク者へのスクリーニング適応は議論中。 被曝量は減ったが、ゼロではない。
Vol. XIII · Halftime
心臓は、
カテーテルなしで全部見える時代へ。
— CT-FFR, AI ECG, siRNA
05
FH
家族性高コレステロール血症は、見逃されている
FHSC 2021, Lancet
0/250
FH 有病率(世界)
FH(family hypercholesterolemia)は人口250人に1人と意外に多いが、診断率は10%程度。早期発見すれば心血管予後を大きく変えられる。

FH は 世界の 250 人に 1 人に存在するが、診断されているのは10%以下。 診断されないと若年(30-50代)で心筋梗塞を起こす。 スタチン早期開始で予後は劇的に改善するが、PCSK9 阻害薬の追加で更に下がる。 家族性スクリーニング(cascade screening)が欧州で標準化されつつある。

Practical / 実践への落とし
家族に若年(55歳以下)の心筋梗塞・突然死・高 LDL があるなら、自分も評価対象。 LDL ≥190 mg/dL(治療前)が一つの目安。Dutch Lipid Clinic Network スコアで点数化。
Unsettled / 未確定の余白
遺伝子診断の保険適用が国によって違う。 子どもへの早期介入の長期予後データはまだ収集中。
06
SGLT2
SGLT2 阻害薬は、糖尿病薬から心保護薬に
EMPEROR-Preserved 2021
HR 0.00
HFpEFへのSGLT2 阻害薬(EMPEROR-Preserved)
もともと糖尿病薬として開発された SGLT2 阻害薬が、HFpEF(駆出率保持型心不全)への保護効果で循環器を変えた。

EMPEROR-Preserved(n=5,988、HFpEF):empagliflozin で CV死/HF入院 HR 0.79(95%CI 0.69-0.90)。 DELIVER(dapagliflozin)も同方向。糖尿病有無に依存しない効果。 HFpEF はこれまで有効薬がほぼなかった病態。SGLT2 が初めての構造的選択肢に。

1エンパグリフロジン0.79
EMPEROR-Preserved 2021 · n=5,988 · HFpEF · CV 死/HF 入院ハザード比(プラセボ基準、HR=1)
Practical / 実践への落とし
心不全(特に HFpEF)診断あれば、糖尿病の有無に関わらず SGLT2 阻害薬を主治医と議論。 副作用(尿路感染・脱水・足切断リスク)の説明と運用ルール(シックデイの中止)を確認。
Unsettled / 未確定の余白
糖尿病なしで予防的に開始する基準は標準化されていない。 長期コスト負担の議論。
07
血圧 120
血圧 120 が、新しい目標になりつつある
ESPRIT 2024
0
mmHg — 新しい目標値
SPRINT 試験以来、収縮期血圧 120 mmHg 目標が議論されてきた。ESPRIT 試験が中国で再現し、6試験統合 IPD でも支持。

ESPRIT(n=11,255、中国):SBP 120 目標で MACE −12%、心血管死 −38%。 6試験統合 IPDメタ:120 目標で全死亡 −9%、MACE −16%。140目標との差は確実。 ただし高齢者では転倒・腎機能低下リスクとのトレードオフ。

Practical / 実践への落とし
家庭血圧の朝平均が ≥130/80 なら、120 目標を主治医と議論。 減塩塩、運動、減量、Vol. VIII §04 の壁スクワットで5-10 mmHg は動かせる。 75歳以上は転倒リスクと相談。
Unsettled / 未確定の余白
80歳超での 120 目標の安全性は議論中。 家庭血圧と診察室血圧の標準化。
120/80 は、
新しい標準になりつつある。
Vol. XIII / 07
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遺伝・画像・siRNA。
心血管医療は、新しい世代に入った。

Vol. XIII で扱った17本の論文は、すべて PubMed API で実在検証済み。

ホルモンは Vol. XIV、自己定量化は Vol. VIIへ。

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