ホルモン最適化の、
境界線。
TRT、HRT、甲状腺、副腎疲労、コルチゾール。マーケティング言説と臨床エビデンスの距離が大きい領域を、過去5年の主要 RCT で読み直す。
Vol. V が薬、Vol. VI が時間、Vol. XIV はホルモン。「補えば良くなる」とは限らない。順序と適応の話。
Lincoff 2023 NEJM TRAVERSE(n=5,246、低テストステロン症成人):TRT 群と プラセボ群で MACE に有意差なし(HR 0.96, 95%CI 0.78-1.17)。 一方 Snyder 2024 NEJM(同コホートの骨折サブ):TRT群で骨折リスク HR 1.43と意外な結果。 機序は不明だが「補えば全部良くなる」ではない。
“TRT は心血管に安全だが、
骨折は増えた。
補えば全部良くなる、
ではない。”
Yeap 2024 Ann Intern Med IPDMA(n=255,830 person-years):朝の総テストステロン <300 ng/dL を2回確認が低テストステロン症の最低限の診断基準。 単発検査で20-30%は偽陽性、特に肥満・睡眠不足・急性疾患の影響を受けやすい。 症状なし(HHL:hidden hypogonadism)への治療は推奨されない。
Manson 2017 JAMA WHI 18年追跡:HRT による全死亡は 50-59歳開始群で HR 0.78、70-79歳開始群で HR 1.14。 NAMS 2022 ポジションステートメント:閉経後10年以内 or 60歳未満開始の症状ある女性で、benefit > risk。 時期と症状適応で評価が逆転する。
“HRT は、
60 歳の崖を越えるな。”
Stott 2017 NEJM TRUST(n=737、65歳以上、subclinical hypoT):levothyroxine 群と プラセボ群で疲労・QOL・心血管イベントに有意差なし。 軽度の TSH 上昇(4-10 mIU/L)に対する薬物介入は無症状者では推奨されない。
Cadegiani 2016 BMC Endocr Disord 系統的レビュー:「副腎疲労」を支持するエビデンスは存在しない。 コルチゾール日内傾斜の異常は慢性ストレスでは観察されるが、「副腎が疲弊する」という機序ではない。 Adam 2017 のメタ:日内傾斜の平坦化はストレス・うつ・代謝症候群と相関。
T4DM RCT(n=1,007、50-74歳、耐糖能異常、testosterone <14 nmol/L):TRT 群で 2 年時点の2型糖尿病発症 11% vs プラセボ 19%、ARR 8%、HR 0.59。 ただし TRAVERSE と整合的に、骨折リスク増加が観察されたため運用注意。
Liu 2020 Sleep(n=24、睡眠剥奪 RCT):1週間の睡眠時間制限で テストステロン 10-15%低下。 Davis 2019 JCEM(女性T治療 Global Consensus):閉経後 HSDD への低用量 T が選択肢として承認。 だがどちらも「先に睡眠と運動を整える」が前提。
“ホルモンは、
最後に動かすレバー。”
- 01.1Lincoff 2023, NEJM · TRAVERSE↗
- 01.2Snyder 2024, NEJM · 骨折サブ↗
- 02.1Yeap 2024, Ann Intern Med · IPDMA↗
- 03.1Manson 2017, JAMA · WHI 18年↗
- 03.2NAMS 2022, Menopause↗
- 04.1Stott 2017, NEJM · TRUST↗
- 05.1Cadegiani 2016, BMC Endocr Disord · SR↗
- 05.2Adam 2017, Psychoneuroendocrinology · meta↗
- 06.1Wittert 2021, Lancet Diab Endo · T4DM↗
- 07.1Liu 2020, Sleep · 睡眠剥奪↗
- 07.2Davis 2019, JCEM · 女性T治療GC↗
ホルモン補充は、順序の話。
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